2019年ラトヴィアの動向

2019年ラトヴィアの動向

2020年1月
ラトヴィア投資開発公社
日本コーディネーター長塚 徹

資料中の月日は特に断らない限り2019年の月日です。

1. 政治情勢

2019年ラトヴィアは政権の根幹を揺るがすような下記一連の騒動に見舞われたが、カリンシュ5党連立政権は安定した動きを見せている。現政権はカリンシュ首相の所属する最小の「新統一」党が中核となり、他の4党の勢力均衡の下に成立した。与党各党は種々の思惑はあっても連立政権を維持する方向である。

(1) 地方自治体改組
国会は11月7日地方自治体改組構想を原則的に支持する旨決議した。本件改組問題はラトヴィア市民に直接的に関係する問題であり、年間を通し継続的に報道、議論された。地方自治体の首長などは閣議の席上あるいは反対派の会合等において強い反対意見を表明して来ているが、政府案に代わる具体案は提示されていない。この間、関係自治体、住民の要望にしたがい、主要都市を独立の自治体とし、当初案の35自治体より39自治体に増加された。国会審議の過程において新自治体の構成地域につき微調整が行われる可能性はあるが、議論は出尽くした感がある。与党各党とも改組を進める方向であり、今後とも紆余曲折はあろうが本件改組は実現する可能性が高い。

(2) 公的医療関係者・教育関係者の給与増額問題
国会は2018年12月13日、今後3年間医療関係者の給与を毎年20%増額する旨決議した。近年医師、看護婦等医療従事者の西欧諸国への移住、不足が大きな問題となり、医療サービスの低下が強く意識されている。

しかしながら、2020年予算では平均してインターンの給与を20%、その他の医療従事者の給与を10%上げる旨規定され、上記決議を実施できなかった。医療関係者はこれは政府・議会の背信行為であると激しく糾弾、国会前でデモを行うなど、抗議行動を繰り返して来ている。カリンシュ首相を始め政府首脳陣は、「財源には限りがある」、「すべての公約、決議を実現できる訳ではない」等の説明を繰り返している。

他方、教育改革の一環として近年教師の給与引き上げが大きな政治課題となり、6月19日に9月1日より平均給与を710ユーロより750ユーロに引き上げる旨閣議決定した。右を実施するため2020年予算においても同年8月末までの予算措置は取ったがその後の予算措置は取られていない。上記増額は政府が以前に同意した引き上げを大きく下回る一時的措置に過ぎず、教職員組合も政府の背信行為を責め、ストライキを実施する等の警告を繰り返して来ている。

(3) KPVLV党の内紛
カリンシュ連立内閣組閣当時から内紛の絶えなかった同党はその後も内紛を繰り返し、党首脳陣の除名、脱退が相次ぎ、同党国会議員団は選挙当時の16名より12名に減った。同党は過般の欧州議会選挙においても議員を選出できず、世論調査においても支持率が低迷している。次回国会選挙(下記7ご参照、次回通常選挙は2022年10月)においては同党得票が5%を下回り(12月の世論調査では1.8%)全員落選することが考えられる。

同党は指導体制を欠くなど、同党の不安定性および下記三問題を引き起こした交通、司法、科学・教育相の所属する「新保守党」の動きが現政権の不安定要因となっている。

(4) 国有鉄道首脳陣の解任
5月交通相は国有鉄道首脳陣の能力不足を批判し、その解任を求める旨声明した。同相自身には解任する権限はなく、その権限を持つ評議委員会はこれに賛同せず、政治問題となった。その後非難合戦が続いたが、7月末当該首脳2氏は辞任する旨発表し、一件落着した。けれども、その後2氏に対しラトヴィアとしては異例の高額の退職金を支払う契約があることが発覚した。

(5) 検察総監の解任問題
2月ボルダーンツ司法相(新保守党党首)は検察総監が法律に規定する要件を満たしていないとして、同総監の能力不足を批判し、その解任を検討すべきである旨声明した。最高裁判事団に解任の権限があるところ、最高裁裁判長は司法大臣が挙げた種々の要因に賛同せず、政治問題が生じた。同総監の任期は2020年夏までとなっているところ、司法相は次期総監選任手続きの改善を提案している。在野の司法関係者は、これは政治勢力による司法制度へ介入であるとして、司法相、新保守党の動きに批判的意見を表明している。他の与党各党から同相の言動に賛同する声は上がっていない。

(6) ラトヴィア大学学長不再任騒動
|ラトヴィア大学総会は6月6日、学長にムイジュニエクス前学長を再選したが、内閣は8月末、学長選挙に多数の違法行為があったとの教育相の主張を入れ、同学長を不再任とするとの決定を行った。選挙は公正に行われと主張していた同学長は直ちに行政裁判所に提訴し、右閣議決定の取り消しを求めた。行政裁判所は10月始め閣議決定を取り消す旨判決した。判決は同学長の主張を全面的に支持する内容であった。教育省(内閣)は、右判決は第一審の判決であるとして、上級審に控訴し現在審理中である。内閣は公的には教育相、「新保守党」の立場を推進して来ているが、カリンシュ首相を始め「新統一」首脳等は記者会見において「要点は学術水準の向上にある」等述べ、「新保守党」に距離をおく発言を行っている。

2. 経済情勢と今後の見通し

欧州経済は停滞気味であるが、ラトヴィア経済は比較的堅調に推移している。2019年の経済成長率は3.2%(実質、以下同じ)、20年は2.8%、21年は2.8%、22年は2.8%それぞれ増加する予測である。物価上昇率はそれぞれ2.8%、2.5%、2.1%、2.0%の予測、求職者率は7.0%、6.6%、6.3%、5.7%の予測である。2019年の税込月給は1,079ユーロの見通しであり、これは前年比4.6%増、以降毎年3.4%、2.8%、2.9%増加すると予測されている。

輸出は2019年18,220百万ユーロ(前年比2.9%増)、その後19、187百万ユーロ(3.2%増)20、484百万ユーロ(3.6%増)、21、813百万ユーロ(3.4%増)、輸入は2019年17、906百万ユーロ(0.9%増)、その後18、865百万ユーロ(2.8%増)、20、082百万ユーロ(3.9%増)、21、558百万ユーロ(4.7%増)の予測である。エネルギー部門の回復、製造業の伸びおよび良好な天候による農業生産の増加が経済成長に貢献した。

詳細は下記財務省ホームページを参照されたい。
https://www.fm.gov.lv/files/tausaimnieciba/2019-12-04_13_04_45_Macroboard_October.pdf

3. 日本経済団体連合会代表団の来訪

11月13日、14日経団連欧州委員会一行32名が来訪し、ビジネスフォーラムを実施した。フォーラムでは経済、地方自治、運輸の三経済関係閣僚が講演し、ラトヴィアの投資環境の有利性につき説明した。一行はまたカリンシュ首相を表敬訪問し、ドローン製造会社(UAV factory https://www.uavfactory.com/)またはリ ーガ港及び同港のRUT社(RUT http://www.ruterminal.lv/ 三井物産系列会社)を視察し、ラトヴィア雇用者協会と協議した。この他、下記のヴェンチャー企業が自社の事業活動を紹介した。

4. 日本MM Capital Partners社の進出

丸紅が太宗を出資する日本MM Capital Partners社が12月2日、ラトヴィアのガス輸送パイプライン・貯蔵事業を運営するAS Conexus Baltic Grid社の株式の29・06パーセントを購入する契約に署名した。関係機関の承認が得られ次第取得する予定。

5.「ソヴィエト・ミルクーラトヴィア母娘の記憶」出版

ノラ・イクステナ原著、黒沢歩翻訳 新評論社 2、200円
ソ連体制下に生きて自由を求めた母娘の行く末は―。バルトの道、ベルリンの壁崩壊を経て、独立へ向かう道のりをたどる、知られざるラトヴィアのベストセラー小説、初の邦訳(アマゾン図書情報)

6. 2019年各国進出企業

(1) FTS Baltic ( http://ftsgroupco.com/ 滑動・輸送システムの製造)
滑動(sliding system)・コンベヤー等を製造するドイツのFTS社がリエパーヤ工業団地に製造拠点を設置した。当初投資額7百万ユーロ。2019年中に180名、明2020年末までに250名を雇用する予定。

(2) CHESS24  (https://chess24.com/en チェスのソフト開発・販売)
ドイツ人の世界的チェス選手Jan Gustafssonが設立したは同社はラトヴィアに開発拠点を設置し、既に12名の職員を雇用した。同社は本年、現在世界チャンピオンのノルウェー人Sven Oeen Magnus Carlsenが設立したPlay Magnus社と合併、ChessX社を設立し、チェス学習ソフトをインターネット上で提供している。

(3) Lufthansa
ルフトハンザ航空は当地にデータサービスセンターを設置することを決定した。同センターは、同社内の需要に応えるだけでなく、会計、オートメーション化などIT分野でサービスを提供・販売する。300名以上の職員を雇用する予定。同社は1993年に当地にAiro Catering Services社を設立し翻訳、機内食の調達など食品事業を展開して来ている。

7. 国会解散国民投票

ラトヴィアにおいては国民に国会を解散する権限が与えられおり、現在このための署名活動を実施中である。署名開始後1年以内、すなわち、2020年11月14日までに有権者の10分の1、15万4865人の署名が集まれば選挙管理委員会は国民投票を実施する。選挙管理委員会は上記署名数達成後2か月以内に国民投票実施の可否を決定し、右決定後2か月以内に国民投票を実施する。
署名は下記公共機関で行うことができる。
―政府のホームページ
―公証人に対し行う
―地方自治体あるいは児童・禁治産者保護裁判所
国民投票にて有権者の三分の二(103万2452人)以上が投票し、かつ、有権者の半数(77万4340人)以上が賛成すれば解散が成立する。
署名活動による国会解散が現実化したのはラトヴィア憲政史上初めてのことであり、また、上記ハードルは極めて高いと考えられるが、識者中にはこれが実現するとの声もある。上記自治体改組、公的医療関係者・教育関係者の給与増額問題等、国内各方面に不満が鬱積し、関係団体も解散発起人になった。野党も支持している。12月末までに約4万4千人の署名が集まった。署名開始後時間の経過とともに署名者数は急減しているが、関係団体、野党が署名活動に参加したのは極く最近のことであり、先行きは予断を許さない。本件国民による国会解散権、前半期レポート「ラトヴィアの選挙制度」で報告した「各候補にプラス、マイナス票を入れる制度」などラトヴィアの政治家は国民の声に真剣に応えざるを得ない環境に置かれている。

8. ラトヴィア会計検査院

ラトヴィア会計検査院(下記同院リンクご参照)の活動は注目に値する。国の歳入、歳出の検査、国が「補助金、奨励金、助成金を交付し損失補償等財政援助を与えている団体等」あるいは「国等が行う工事その他の役務の請負人もしくは物品の納入者に関連する会計」につき検査を行う点については日本と変わりはない。当公社を含む公団、公社、事業団等政府関係機関が検査を受ける。他方、ラトヴィアにおいては地方自治体も検査の対象になる旨明記されている。また、昨今は、汚職防止・退治局(KNAB)、国税庁、公正取引委員会、調達審査庁、国境警察等の政府機関との情報交換、協力を行い、公金の不正使用、不適正使用の防止に努めている。状況によっては強制調査も必要であり、警察との協力関係を強化したいと検査院長は述べている。
ラトヴィアにおいては国会、内閣に対する報告、勧告だけではなく問題があった機関、団体に対しても直接指摘・勧告を行い、是正を求める。関係機関の会議等に参加し、勧告等を行う権限も明記されている。
最近法令が改定され、8月1日より会計検査院に対し、国等に損失を与えた公務員個人から取り立てを行う権限が与えられた。会計検査院長は「勧告は業務改善に努力している部局に対しては有効であるが、その方向性がない官吏に対しては強制措置が必要である。ただし、これは予防的措置である」等述べている。
ラトヴィアにおいては毎年会計検査院報告が大きく報道され、幾つかの具体的事例が提示され、一部関係者が摘発される。日本においては新聞紙上で簡単に報道されるだけかと思われる。不正、無駄遣いの防止、公明性、明瞭会計を本旨とすることなど建前上は両国間に差はないが、公金の不正使用、無駄遣いを防止せんとする努力に関しては大きな差があるかと思われる。
わが国昨今の「桜を見る会問題」では予算の3倍に上る金額が支出された由。どこから流用されたのか、また、その合法性、公共性が問題になるが、それと同時に予算を大きく上回る資金を支出できると言うことになると予算編成の意味合い自体はっきりしない。関係予算の会計検査が待たれる。2018年以前の検査結果はどうだったのか。公共財の私物化は世の習いとも言え、きちんと対処する必要がある。旧ソ連圏国家の中で西欧的民主国家に脱皮したのはバルト諸国だけであると言われる。ラトヴィア会計検査院の活動を見る時この感を深くする。

2019年輸出大賞
SIA TILDE社  翻訳ソフトの作成・販売
https://www.tilde.com/

輸出競争力賞(大・中規模企業)
一等賞: SIA iCotton社    木綿製衛生製品の製造 http://www.icotton.eu/en/

二等賞: SIA Kreiss社     陸上輸送 https://www.kreiss.lv/en

三等賞: AS Balticovo社 卵・卵製品の製造・販売 http://www.balticovo.lv/en/

輸出競争力賞(小規模企業)
一等賞: SIA Crosschem社  自動車関連化学製品の製造 https://crosschem.lv/

二等賞: SIA Snores社 児童用品の製造・販売  https://ettetete.com/pages/about-us?ls=en

三等賞:SIA Mapon社 GPSを利用した車両走行・作業管理ソフトの販売 https://www.mapon.com/en

輸入代替品賞
一等賞: SIA Kinetics Nail Systems社 日光で凝固するSolarGelの製造・販売 https://kineticsbeauty.com/

二等賞: SIA RUBRIG 社     ゴムタイルの製造 https://rubrig.com/lv/sakums/

三等賞: SIA Silvanols社 免疫性を向上させるGolmmune剤の製造・販売 https://lv.silvanols.com/en/

イノヴェーション賞
一等賞: AS SAF Tehnika社 屋内の空気質を監視Aranet4装置の製造・販売 https://aranet4.com/

二等賞: SIA VALPRO社  アルミ製造関連製品ASDSシステムの製造・販売  http://www.valpro.lv/lv/

三等賞: SIA Zekants社  https://pupuchi.lv/en/home/

工業デザイン賞
一等賞:  SIA Crosschem社 自動車関連化学製品の製造 https://crosschem.lv/

二等賞: SIA PAA 浴槽・浴室の設計・施工  http://www.paa.lv/

三等賞: SIA Mezroze&Co 各種織物の製造・販売  http://www.mezroze.lv/en/

上記諸情報に関するご質問は長塚に、ラトヴィアへの投資、貿易関連のご質問、ご依頼はアリナ嬢にお願い致します。アリナ嬢は日本語が堪能です。
(1)郵便番号150-0047
東京都渋谷区神山町37番11号プリマヴェーラ神山A号室
駐日ラトビア共和国大使館
ラトヴィア投資開発公社日本代表
アリナ・アシェチェプコワ(Alina Ascepkova)
電話:        03-3467-6888
ファックス:  03-3467-6897
Eメール:    jp@liaa.gov.lv
Alina.ascepkova@liaa.gov.lv
携帯電話:    9080―0012―13

(2)ラトヴィア投資開発公社(Investment and Development Agency of Latvia)
Perses Street 2, Riga LV-1442, Latvia
日本コーディネーター長塚 徹(Toru Nagatsuka)
電話:        371―6703ー9494
ファックス:  371-6703-9401
携帯電話: 371-2631―7188
Eメール:    toru.nagatsuka@liaa.gov.lv
ホームページ:       www.liaa.gov.lv