2019年ラトヴィアの動向―前半期

2019年ラトヴィアの動向―前半期

2019年6月14日
ラトヴィア投資開発公社
日本コーディネーター長塚徹

ラトヴィアの政治、経済情勢の詳細および要人往来については下記の在ラトヴィア日本大使館ホームページ「月報」をご覧ください。
https://www.lv.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

1. 政治情勢
(1) カリンシュ政権の誕生

1月23日、国政選挙後109日を経過した後に61票の賛成票によりアートルス・クリシャーニス・カリンシュ(Arturs Krisjanis Karins)「新統一8議席」を首班とし、「新保守16議席」、「KPVLV15議席」、「発展のために13議席」、「ナショナルアライヤンス13議席」による5党連立政権が成立した。KPVLVは選挙において16議席を獲得したが、その後1議員が除名され、また、信任投票においても同党からは11名が賛成したのみであり、党内に野党勢力を抱えると言う不自然な状況にあり、これが不安定要因になっている。「協調センター23議席」および「緑と農民連合11議席」が野党である。

新政権の閣僚配分は以下のとおりであり、閣僚の配分上も各党の均衡が保たれている。

「新統一」首相、外務、財務
「新保守党」司法、交通、科学・教育
「KPVLV」経済、内政、厚生
「発展のために」国防、保険、環境・自治
「ナショナルアライアンス」文化、農林

5党は内閣としての政策を詳細に規定した協力協定に署名しており、これがカリンシュ政権の基盤になっている。ただし、同首相は弱性勢力を地盤とし、各党の勢力均衡の上に成立した内閣であるため、同首相がどこまで指導力を発揮できるか注目される。内閣誕生後半年を経過したが、縦割り行政が目立つとの批判も散見される。

(2) 欧州議会選挙

ラトヴィアにおいては欧州議会選挙は5月25日に実施された。ラトヴィアからの議員数は8名。選挙の結果、「新統一」26.2%―2議席、「協調センター」17.45%―2議席、「ナショナルアライヤンス」16.4%―2議席、「発展のために」12.4%―1議席、「ラトヴィア・ロシア人連合」6.2%―1議席となった。投票率は33.51%と前回選挙(30.24%)よりは高率であったが、欧州平均(50・82%)を大きく下回っている。

現与党の内「KPVLV」の得票率は0.9%、「新保守党」4.4%であり、これら2党からは選出されなかった。「KPVLV」については党内内紛が影響したことが明らかであり、党の存続自体に疑問符が付されている。「新保守党」については、司法相(同党党首)が検事総長を解任せんとする動きを見せているところ、これは三権分立の原則に反するとの批判も多く、これが選挙に悪影響を与えたとの見方もある。2018年10月の国政選挙において「KPVLV」は14.25%、「新保守党」は13.59%とラトヴィア系政党中1位、2位を占め、議員数では現政権中の最大勢力である。これら政党の不安定性がカリンシュ政権の先行きを暗くしている。他方、同政権は難産の上誕生した政権であり、他に適当な組み合わせがなく安定度は高いとの見方もある

(3) 大統領選挙

5月29日大統領選挙が実施され、事前予測のとおり、欧州裁判所判事エギルツ・レヴィッツ(Egils Levits)氏が61票(議員総数100名)を獲得し大統領に選出された。7月8日に正式に就任する。現与党各党が早い段階から同候補支持を表明した(下記5後段ご参照)ため、実質上無選挙に近い形になった。この間、KPVLVの一部議員は同党の有力議員シュミット氏を候補に指名し、同党は分裂状態になったが、党内主流派12名がレヴィッツ氏を支持し、3名がシュミット氏に投票した(同氏は6月中旬、同党議会議員団を退会した。自党議員の支持を得られなかったことが遠因になったものと思われる)。レヴィッツ氏は5言語(ラトヴィア語、ロシア語、英語、フランス語、ドイツ語)を自由に話し、数年前に憲法学者としてラトヴィア憲法の前文改正案を起草した人物であるなど、同氏の能力、経験に期待する声が多い。夫人は婦人科医であり、娘が一人いる。ユダヤ系家系の出身。

2. 経済情勢と今後の見通し

近年EU一の経済成長率を示して来たラトヴィア経済は鈍化し始めている。2017年のGDP成長率(実質)は3.2%、2018年は4.8%であったが、2019年は3.2%、2020年は3.0と予測されている。物価上昇率はそれぞれ2.9%、2.5%、2.5%、2.2%と落ち着いている。一人当たり平均賃金月額は925ユーロ(前年比7.9%増)、1、004ユーロ(8.4%増)、1、069ユーロ(6.5%増)、1、128ユーロ(5.5%増)と増加して来ている。求職者率も8.7%、7.4%、7.0%、6.5%と次第に低下する傾向にある。

輸出額は16、516百万ユーロ(6.2%増)、17、382百万ユーロ(1.8%増)、18、536百万ユーロ(3.2%増)、19、881百万ユーロ(4.1%増)輸入額は16、491百万ユーロ(8.9%増)、17、565百万ユーロ(5.1%増)、19、327百万ユーロ(5.7%増)、20、948百万ユーロ(5.2%増)となっている。

2018年においては設備投資および建設部門ならびにEU資金の増加が経済成長に寄与した。過去数年と異なり、鉱工業生産および輸出の貢献率は鈍化した。近年の非居住者の預金引き上げに伴い金融・保険部門の取引額は7.3%減少したが、この減少率は年当初の想定を下回っている由。

詳細は下記財務省ホームページを参照願いたい。

https://www.fm.gov.lv/files/tausaimnieciba/Macroboard_April.pdf

3. 地方自治体の改組

ラトヴィアの行政組織は2段階となっており、国の下には地方自治体しかない。リーガなど巨大自治体もあれば、地方の小自治体など法律に規定されている行政サービスを提供できていない自治体も多い。このため、以前よりこの改革が国家的な政治課題となっていたが、現カリンシュ政権は本件改革を内閣の主要課題に位置づけ、2019年3月に本件作業を開始するための法案を成立させた。3月より9月まで自治体・住民との協議行い、9月に最終的な区分けを決定し、法案を成立させ、2021年までに実施に移す予定。

自治体の改組は、ラトヴィア全国各地、ひいては各市民の日々の生活に影響する話であり、ラトヴィア当面最大の課題となっている。

環境・自治省の発表した今次改革案の骨子は次のとおり。

現在119ある地方自治体を35に集約し、各自治体の体力を強化することにより、法律に規定する行政サービスを提供し、かつ、企業活動など活力ある自治体を形成する。企業のための投資環境を改善し、職の機会を増加し、過疎化を防止する。各自治体には最低1校の高校を維持する。各自治体の中心都市への道路を整備する。この結果現在1614名いる地方議会議員数を686名に減少させ、関係職員数を削減することにより行政経費を大幅に節減する。

本件改革には以下のような背景がある。

EU加盟後、ラトヴィアにおいても働き盛りの若年、中年層を中心に西欧各国に移住する人が多く、地方では急速に過疎化が進んで来ている。人口、生徒数の減少にしたがい、小、中・高校の統合・廃校が行われて来ているが、学校は地域の主要施設であり、統・廃校には地域住民の強い反対がある。自治体を拡大すれば、これが楽になる。

他方、自治体数が大幅に減少すると言うことは自治体の首長等が職および地位を失うことであり、統廃合が予定されている自治体の首長等は基本的に反対であり、自治体が構成するラトヴィア自治体協議会が最大の抵抗勢力になっている。統廃合が進めば、これが地方の過疎化を更に進行させるとの意見も強い。けれども、日本とは異なり、地方議会議員の多くは別に職を持っており、生活基盤を維持する上では問題が少なく、地方議会議員からはあまり大きな抵抗はない。他方、住民は自分の居住する地域、都市に歴史的、感情的に深い愛着があるし、地域の中心地を失うことに対しては当然強い抵抗がある。統廃合の対象となる地域の中には周辺のどの地域、都市と合併するか自明でない例も多く、また、住民間の意見が合わない例が多数ある。

今次改革案は当初案であり、自治体・住民との協議を通し改善・改定するものとされている。過疎化が進行する中、現体制のままでは従前の行政サービスを提供することは不可能であり、合理的、段階的に整理し、かつ、活力、経済力のある自治体を形成する必要があることは自明である。強い反対、抵抗はあるものの本件改革自体は避けて通ることができないとの一般的認識がある。ただし、本件改革には政府の強い指導力が不可欠であり、担当大臣の指導力、連立政権の安定性等に疑義が生じる場合にはこれが当面頓挫する可能性も排除できない。

4. ラトヴィアの選挙制度

ラトヴィアの選挙制度には候補者に対する選挙民の声を反映させる面白い仕組みがある。国会議員数は100名、4年毎の定例選挙であり、極く例外的な場合を除き解散はない。全国5選挙区、すなわち、最近の2018年第13回国政選挙においてはリーガ35議席、ヴィッゼメ25議席、ラトガレ14議席、クルゼメ12議席、ゼムガレ14議席の配分であった。国外における投票はリーガに勘定した。比例代表制であり、ラトヴィア全国において得票率が5パーセントに達しない政党は排除される。

比例代表制であるため、選挙人は先ず投票する党の用紙を受け取る。用紙中には各選挙区における候補者名が一覧表になっており、選挙民は各候補についてプラス、マイナスを付すことができる。これらプラス票、マイナス票を集計することにより、その選挙区における各党の候補の優先順位が決定される。これすなわち、各党が決めた順位はそれほどの意味を持たない。順位が逆転する事例が多数ある。筆頭候補であると言って安心することは出来ない。2014年議会選挙においては当時連立政権の中枢にあった「統一」党の党首はクルゼメ選挙区の筆頭候補であったが、この制度により第4位、次点になり、落選した。同女史は権力主義的との批判が絶えず、これが選挙民の投票態度に影響した訳である。

5. 国民発議権

ラトヴィア国民には議会に動議を発議する権利が与えられている。具体的な議案につき有権者の1万人以上の署名が得られた場合には、署名簿を選挙管理委員会に提出する。選挙管理委員会は署名者が規定の条件を満たしていると認定した場合には、国内各地の選挙管理委員会を動員し投票を実施する。有権者(最近の第13回議会選挙では155.5万人)の10分の1以上が動議を支持した場合には議案は大統領に提出され、大統領より議会に上程される。

この制度は、国民の声を国政に反映させるものとして民主主義の強化に繋がるものとも考えられる。他方、日本など国民が均一な国家においてはともかく、民族構成など国内に分断要素が多い国家においては分断を助長することになる。2012年にロシア語を第二国語とする動議が発議され、憲法の規定に従い国民投票が実施された際には全有権者154万人中の27万人強が賛成したのみであり、成立しなかった。成立するためには過半数の賛成が必要であるが、ラトヴィアの人口構成(ロシア語系人は3割以下)から見て、この動議が可決される見込みは元々なかった。

国民発議が実現した例として大統領選挙の公開投票制度が挙げられる。ラトヴィアにおいては議会(100名)が大統領を選出するが、従来は非公開投票であった。しかし、本件国民発議が成立し、議会にいおいて討議、公開投票とする議案が成立した。このため、上記2019年の大統領選挙はラトヴィア国政上初めての公開投票となり、エギルツ・レヴィッツ氏が大統領に選出された。従来は、非公開であったため、最終決定まで予測不能とも言えた。独立回復後最も人気の高い大統領となったフレイベルガ元大統領は各党間の妥協候補として浮上し、選出された例もある。

公開では知名度が高い候補が圧倒的に有利であり、人気投票になりかねない。ただし、第一回投票で決着がつかなかった場合には1候補が過半数を獲得するまで投票を繰り返すことになるが、第二回以降は秘密投票であり、各党間の妥協を容易にしている。

6. サマータイムの廃止

EUは2021年3月以降はサマータイムを廃止する旨決定した。標準時間を選択する国は2021年10月31日に標準時間に戻し、その後変更しない。

ただし、これはEU全体を標準時間にするとの趣旨ではなく、年間通してサマータイムを維持することも想定されている。すなわち、今後各加盟国内において検討が進むことになるが、ラトヴィアは世論調査を実施し(85パーセントが夏時間を選択した)、また、国内関係団体の意向も聴視した上で、年間を通し夏時間を維持することを支持する旨決定した。ただし、バルト諸国間では共通の時間とすることを条件としており、また、EU全体として共通時間とすべしとの立場である。

上記の諸情報に関するご質問は長塚に、ラトヴィアへの投資、貿易関連のご質問、ご依頼はアリナ嬢にお願い致します。アリナ嬢は日本語が堪能です。

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